2010年7月26日月曜日

マーキング(その弐)


以前のエントリ「マーキング」では「今年はやらない」と書いてたんですが、結構数が確保できそうなのと、道具でいいのが手に入ったので、やっぱりやることにしましたマーキング。まあ巣内個体カウントの手助け程度の意味しかないんですけどね。

で、今回はうまくいったマーキングのしかたと、マークした個体の巣への戻し方について。


上はすでにマーキングが終了した段階で撮っています(まあマーキング前に撮影なんて悠長なことはやってられないわけで・・・)。
CO2で麻酔した(というか、酸欠でふらふらになっている)コハナバチは真ん中の足をつまむようにして持ちます。こうすると腹が爪に当たるので刺されません。

マーキングで使っているのは、ラッカー系の顔料を使っている三菱の「ペイントマーカー」。昆虫にナンバリングやマーキングをするときには大抵これを使います。ただ、コハナバチにマークするにはちょっと太すぎ、インクが出すぎなきらいがあります。なので、親指で確認をしてから使用します。爪に水玉模様がついているのはそのせいです。


こちらは少しインクが広がっていますが、翅に干渉してないのでセーフ。これから巣穴の中に戻します。


 そのままほっといても、大抵はいったん飛び立ってからまた戻ってきますが、酸欠で朦朧とした状態で天敵に捕まってはたまらないし、門番がいない巣がアリに襲われるかもしれないので、ラッカーが乾き次第、すぐに巣に戻します(生乾きだとマークが薄くなったり、巣仲間にどやされたりする)。

 論文を読むと「アスピレーター(吸虫管)で巣に戻す」などと書いてあるんですが、うまくいった試しがないので自己流で。まず、先の細い精密ピンセットで昏倒しているハチをつまみ、巣の入り口に頭から突っ込ませます。
目が覚めてからこれをやると足で踏ん張って外に出てしまうので、意識不明のうちにすばやく。軽くCO2処理しなおすこともあります。


 頭が入ったら、そっとピンセットでお尻をつつきます。ゆっくり繰り返すと、半分覚醒したハチが、寝ぼけ眼で入っていきます。上の写真くらいになれば十分で、侵入者は突き出たお尻でシャットアウトされます。
 このやり方は、ピンセットで麻酔したハチを巣に戻そうと悪戦苦闘していたところ、帰ってきた別のハチが気絶しているハチの尻をつついて起こし、中に入らせたのを見たことで思いついたものです。
 念を入れる場合は、上から軽く土を降りかけておくのも有効。翌日にはほぼ確実に、元気に巣外活動や門番をしています。

 コハナバチの巣には夏でも2~3頭程度しか成虫がいないので、マーキングの形状や色で個体識別も可能です。 名前をつければ愛着もわくのではないでしょうか。わき過ぎると解剖がしにくいので、自分はつけませんが。


 最後におまけを。これは雨の前などで巣口に土で栓をした状態の巣です。右側に猛スピードで走る何かがいますが、何でしょうか?標準和名まで当てた方には恐れ入ります。

20100612支笏湖付近にて

支笏湖近くに、細いが強い流れの川があり、オショロコマが棲んでいる。

 この川の源流域は沢登りの初心者ルートとして知られており、・・・まあ普通の釣り人には遡行が面倒くさくなっている。よっぽどオショロコマが釣りたい酔狂でないと入らないので、まあプレッシャーは低いだろうと予想して釣行計画を立てたという次第。

 入るのは3回目。最初は寝坊して半分のルートを往復(この辺の顛末はマンガのネタにしてみた)。2回目は今年の春、雪解けの増水で手が出せず。


 こんな感じの箱沢が続く。上の写真は割と下流部にある釜。こういった大場所ではあまり釣れない。小さなポイントを丁寧に攻めてようやくヒットする感じ。


 全体的に大きさは15センチ程度。オショロコマならまあ平均サイズと言える。針掛りしたらさっさと釣り上げ、水中で針を外し、2分以内に撮影してリリース。


  この日の最終ポイント。このゴルジュの先にもまだまだ沢は続いている。奥に見える滝が魚止めかどうかを確認したかったが、足を痛めてしまっており、ちょっと高まきが難しめだったことから今回はこれで撤退とした。

 全体を通して、好条件にもかかわらず魚影が薄い感じがした。沢登りのルートともなっているため、採集圧は低くないのだろう(命の教育、とかいって食べる家族連れもいるようだし・・・)。そっとしとくに越したことはない。

2010年7月17日土曜日

ホクダイとシオカワ。


 コハナバチの仲間は割と同じような、比較的開けた場所に営巣する。でもよく観察していると、種によって好みの場所が微妙に異なっていて面白い。


 こちらはホクダイコハナバチLasioglossum duplex の巣口。この種は坑道を30センチ近くも掘り下げるため、巣口の周りにはうずたかく残土が積まれ、塚のようになっていて見つけやすい。育房が見つかるのも15~20cm前後の深さ。



 こちらはシオカワコハナバチLasioglossum baleicum の巣口(写真がブレ気味なのはご勘弁)。坑道をあまり掘り下げず、夏の育房も10センチ足らずの深さで見つかる。そのせいか?残土が出ているのはあまり見かけない。

 個人的な経験だけど、ホクダイコハナバチは、ほぼ一日中太陽が照りつけるような裸地に営巣することが多い。夏場の地表面は40~50度にも達するような場所だが、その高温を深く坑道を掘ることで回避し、育房の深さを適温(成長スケジュール上での適温)の層に調節しているんじゃないかと思う。

 逆にシオカワコハナバチは、落葉樹の日陰になる部分、また傾斜地に営巣する。坑道が浅いのは、太陽光が届かないことで、適温域の層が浅くなるためだろう。傾斜地は・・・たとえば、広葉樹がプールする雨水を嫌っているとか?ちょっとこれは実証が面倒くさそう。

 さて。このエントリを書いていて、ホクダイとシオカワのどちらがより北方に適応しているのかということと、二種の営巣地間での捕食圧の違いが気になってきた。ちょっと今度フィールド行ってきます。

2010年7月15日木曜日

マーキング

溜めに溜めたネタが多すぎて、書く話を選んでもまだ多くて、気がつくと記事を書いている自分がいます。どっかのブログとは大違い。

今回はハチにするマーキングと麻酔の話。

三つ前の記事で、ホクダイコハナバチLasioglossum duplex を卒業研究で使った、と書きましたが、実はもう一つ、他にシオカワコハナバチLasioglossum baleicum も使おうとしていました。というか、本当はこちらが本命だったんですが、ある理由により調査地が破壊され、やむなくホクダイにシフトしました。


 それがこのハチ。
 個体識別のために、ラッカーペンでマーキングをしています。触角に塗料が付着しているので、はっきり言って失敗例です。

 そして、このマーキングが結構難しい。塗料の出がなかなかうまく調節できないんです。羽の筋肉などを塗料で固めずに、ちょっとだけ付着させるのは、未だにコツがつかめてません。最近は扱う営巣集団が小さいので、ハチをダメにするリスクを避けるため、本番ではやらないことにしました。練習は今夏もするつもりですが。


 ちなみに麻酔ですが、CO2ガスを使っています。麻酔というより、窒息させて動きを止めるの方が近いですが。カメラ用のブロワが、容量も大きく勢いもあるのでお勧めです。
 室内でマーキングを行う場合は、4℃の冷蔵庫に入れると動きが止まります。どちらにしてもすぐに目が覚めるので、手早く、正確にが基本。それが難しいんですけどね。

早春のバードウォッチング

今年の2月、研究室のヒトビトと、むかわ町の海岸付近までバードウォッチングに行ってきた。狙いは渡ってきた猛禽類。春になると帰っちゃうのでギリギリのチャンス。


 が、やっぱりちょっと遅かったらしくて、いっぱい見ることはできなかった。天気はピーカンだが、風が強くて寒い。車の中で肉まんかじりながら待っていると、ようやく一羽目が来た。

 鳥に詳しい先輩いわく、「ハイイロチュウヒ」とのこと。しかし・・・速いなあ。シャッタースピードの遅いコンパクトデジカメじゃ太刀打ちできん・・・。ロケットランチャー使えないから(持ってもいないけど)ズーム利かないし。上はやっとのことで撮った一枚。ゴマ粒。

 あんまりいい鳥が来ないので、場所を移動することに。


 移動するクルマの中から「オオワシがいたー」と確認する鳥屋。どんな目してるんだ。確かに鉄橋の上に何かいるけど。
 せっかく来たんだから自分は写真を撮りたい。でも精一杯のズームが上の有様。しょうがないので、先輩のフィールドスコープを借りてトライすることに。ツァイスだと・・・うわあ。
 河川敷は風が強く、最大限の厚着をしてきたのに(スキー用ジャケットも合わせて5枚着ていた)鼻水が止まらない。山スキーだってこんなことないぞ。


 後姿も結構堂々としてます。若鳥らしいけど。画面がけられるのはしょうがない。


 こっち向いた。というかにらまれた?どうも鬱陶しがられているみたい。ちょっと飛んで戻るのを繰り返してるので、今日はこれで退散。まあ、一応見れて良かった良かった。ししゃもの天ぷらとそば食って、温泉浸かって帰札。

2010年7月14日水曜日

20091024十勝管内某河川

 釣行記録の更新。

 十勝管内の某河川(名は伏せる)に師匠と釣行。
10月も終わりに近く、日勝峠を越えた先の気温は低め。だが天候に恵まれ、思いがけない好条件の中での釣りとなった。

 晩秋にもかかわらず頻繁にライズがある中、フライフィッシャーの師匠が先行(ルアーは釣り場を荒らすから)。取りあえず自分はスピナーを投げる。
  2~3投目でヒットしたのが上の写真。ランディングネットは長径が25センチで作ってあるので、これは27センチくらい。サイズの割りによく跳ねる。


 こちらは1匹目を釣ったすぐ上の瀞場で来た鱒。
 ここまでのルアーはすべてスミスのニアキス。カラーはアカキン。

 二人ともコンスタントに30cm前後の鱒と遊んでもらいながら釣りあがり、1日目の最終ポイント、大場所、岩盤の淵まで到達したのがちょうど夕まずめ。
ドライフライを流してもアタックしてこないので、順番が回ってきた。ルアーを替えてキャストすると、二投目で重いアタリ。
 一拍おいてあわせると、竿がいきなりのされ、ドラグが鳴った。ジャンプとテイルウォークをかまされながらも何とか取り込んだのが下の46cm。
 ヒットルアーはメップスのアグリアで、針を黒毛の毛鉤に変えたもの。


 この日はこれで納竿。宿に帰り、焼肉屋で乾杯という流れになった。

 そして翌日・・・気温が下がってルアーにはまったくアタックせず、師匠だけ爆釣。43cmと42cmを立て続けにヒットさせたのでした。

いきなりナンですが(グロ画像注意)

取りあえず、今までちょこちょこと撮ってきた写真の中から一枚。


 ホクダイコハナバチLasioglossum duplex の夏巣から取り出した育房塊です。黄色く見えるのは幼虫の餌の花粉球。
 学部4年の卒業研究では、このハチの巣を何個も掘って、次世代の繁殖虫の性比を調べてました。まあその話は追々するとして・・・そんな中で見つけたのが次の写真。


 これは、ホクダイコハナバチの腹部から出てきたネジレバネの一種です。メスですね。本体は甲羅のように見える薄っぺらい部分で、ビーズのように見えるのはすべて卵(と卵巣)。ハチから得た栄養を全部卵に変えているわけです。これ見たときはびっくりしました。

 寄生率は意外と高く、この年採集した個体には、10頭に1頭くらいの割合で寄生していたと記憶しています。

 コハナバチはカスト分化が弱いハチで、外見からは女王とワーカーが判別しにくいため解剖して卵巣の状態からカストを推定しましたが、栄養を吸われているので、ハチの卵巣は完全に萎縮していました。

 ひょっとしたらこれがワーカーカストの起源だったりして・・・というのは、師匠の半分冗談半分本気の話。そうだとしたら、面白い。

開きました

こちらでははじめまして。Vespaと申します。以前からやっていたブログ「赤蜂堂」をご存知の方は、こちらでもよろしくお願いします。

 新しくブログを開設した理由ですが・・・まあ、自家中毒を起こしたからといいますか。

 「赤蜂堂」は、趣味で描いているマンガの公開用として作ったものなんですが、途中でTwitterをはじめたのがちょっとまずかった。

 本業は一応研究者見習いで、興味はどうしてもそっちの方に転がることが多いわけですよ。日常つぶやくことなんて、ほとんど研究活動の愚痴だったりするわけで、自然とそちら側の方との交流ができてくるわけです。

 で、「研究のつぶやきが多い人間」がリンクを貼っている、ほとんどマンガ(しかも恥ずかしいクオリティ)しかないブログを見た人が困惑する、と。

 「赤蜂堂」は「赤蜂堂」で、マンガの更新は遅く、ネタ切れをよく起こすので、マンガ以外のネタを書いてみたりもするんですが、どうもマンガに親しんで下さった方もいる中、いきなり研究がどーのこーのという話をするのも今はちょっと気が進まない。

 「じゃ、ひとまず別の場を開設しようか」という流れで、今回新しくブログを作った次第です。


 「赤蜂堂」は続けますが、あちらはマンガ、もしくはインドア系活動に特化したブログということで。こちらは、研究活動とかフィールドワークとか釣りとか、そういうアウトドア系活動(?)の話を中心に更新していきたいと思います。

 それでは、今後ともごひいきに。よろしくお願いいたします。

 (追伸:このブログの言葉遣いですが、気分や記事の内容によって変わります。大体同じようにしようとは思ってますが。乱暴な感じになってきたら、調子に乗っていると思っていただければ大体正解です)