2011年4月20日水曜日

【論文】【Allodapine Bee】メモ1

PEKKA PAMILOが1991年にAmerican Naturalistで発表した、2本の論文に関するメモ。

 1本目 SEX ALLOCATION


  • 前半はWorker Reproductionと個体群性比の数値についての理論予測。後半はWorkerと次世代QueenとMaleのうち、どれに資源を振り分ければよいかに関する理論予測。後半は今やってる話とはあまりかかわりがないので省略。
  • Sex Allocationがどのようになるかという理論予測について。PAMILOはワーカーが女王の居る状態でオス生産をしてる場合とか、Orphanedの巣でワーカーがオス生産をする場合とか、ワーカーが交尾している場合とかを数式で解いて、Table1に予測値を入れている。が、ここで示されているのは女王が単回交尾の場合を想定しており、複数回交尾の場合については自分で計算しなきゃならんみたい。まあそんなに難しいもんでもなさそうだけど。
  • あとSex Ratio Compensationについて。PAMILOは、「Orphanedワーカーがオス生産をすることで個体群性比がオスにバイアスするとき、メス生産を行なうコロニーが理論値よりもメスを多く生産すること」のように書いている。この状況だけをSRCと呼ぶのかどうか、Taylor(1981)での定義を確認した方がよさそうだ。


 2本目 NUMBER OF REPRODUCTIVE INDIVIDUALS


  • 多回交尾や多女王制、ワーカー繁殖などが、どういう状況のときに個体群内に侵入してくるかの理論予測ではあるのだけど、やっぱり今の話とは関係性がうすいな・・・。




 間違ってるとことかあればご指摘ください。

2011年4月17日日曜日

【論文】【Allodapine Bee】その1

さて忘れた頃になって更新。
 なんだかんだで博士課程に来てしまった。

 博士に来て一発目の更新ということで、自分の論文でも紹介しようかと思ってたのだが、丁度今、研究室のゼミで話すための論文を読んでいるところなので、その概要と感想でもここにのっけていこうと思います。ブログならあとで参照しやすいし、という横着さもあったりする。
 まあ間違いとかはあると思うので、そこらへんは追々修正したい。

 その一本目がこれ。

Schwalz, M. P., Tierney, S. M., Rehan, S. M., Chenoweth, L. B., Cooper, S. J. B. 2011 The evolution of eusociality in allodapine bees: workers began by waiting. Biol. Lett. 7, 277-280.

 Allodapine Bee というのは、オーストラリアやアフリカなどに生息しているハナバチの仲間で、日本には生息していない。近縁種にCarpenter Bee がいて、こちらは日本にも生息していてツヤハナバチと呼ばれている。
 木の中に一本の坑道を掘り、そのまま巣として利用する。ここらへん、ツヤハナバチの仲間に似ている(こちらは草の茎の中に巣を作る)。チューブを使って飼えるらしい。

 こういう巣が未発達なハチは、社会性そのものも原始的なことが多く、同じ属でも単独性のものから一応集団を形成するもの、きちんと不妊のワーカーまで存在するものまで幅広くいるので、社会性の進化の研究材料としてよく使われる。

 著者らによると、Allodapine Beeの羽化したメスは、巣を離れる場合と残る場合があるが、残る場合には大きく分けて次のような3通りの行動をとるという。

  1. 社会的制約(※Introからの引用の直訳だが、たぶん順位制や労働分業のことだろう)なしに産卵を始める
  2. しばらく巣内で内勤(巣の補修など)したのち、産卵・採餌活動に従事する
  3. 自分で産卵を行なわず、採餌活動のような労働に従事する。不妊。


 著者らの研究は、Allodapine Bee 16種について、DNA(ミトコンドリアのCOIなどを使っている)の配列から系統樹を描き、系統樹の各分岐にあった祖先が、「それぞれどのくらいの尤度で上記三つの行動をとっていたのか」を推定することだった。

 結果、真社会性種の共通祖先は(2)の行動をとっていた可能性(尤度)が最も高いという結論が導き出された。著者らはAllodapine Beeにおける真社会性(3)は、(2)の形質から進化したと考えており、その要因として「真社会性の2種が生息する地域では蜜源植物の開花時期が限られていること」を挙げている。

 つまり、自分で直接産卵を行なうことができなくなったため、自分で繁殖を行い直接適応度を得る戦略から、血縁者(弟妹)を育てることにより間接適応度を得る戦略にシフトしたということらしい。



 さて、これを読んでの自分なりの解釈や、思ったことなどをつらつらと。

 まず、(1)(2)(3)の戦略について。著者らはそれぞれ"Reproductive" "Waiting" "Foraging" と分類している。
 (1)は二世代の成虫が同じ巣を共用している状態で、分業は特に見当たらないのが特徴だ。協同といえるかどうか、この論文だけではよく分からない。
 (2)は繁殖の遅延により、ある種の分業が生じているのが面白い。最初、ただ巣に留まることにメリットはあるのかという疑問がわいたが、この巣に居残るハチは巣の防衛などを担っているのだろう。血縁者の巣に居る以上、間接適応度はこれにより確保できる。
 (3)蜜源植物の開花期間の短縮により、真社会性へシフトせざるを得なくなった(自分で卵を産んでも間に合わない)という解釈が面白い。とすれば、Foragingする不妊個体(ワーカー)は、母親による制約(ミツバチのように卵巣発達を抑制されているなど)を受けずに、自力繁殖を放棄したということになる。まあ、性比調節くらいはしていそうだが・・・。

 Allodapine Beeについては、今までほとんどノーマークだったので、これを機に少し論文を漁ってみようと思う。給餌様式とか、生活環とかが気になる。またこの論文、付録があるので、これについても確認する予定。

 それと、系統解析から祖先の形質を推定するという手法が結構新鮮。ベイズ法という複雑怪奇なやつで、あんまし踏み込みたくない話ではあるのだけど、そうも言ってられないだろうねえ。コハナバチは系統関係がかなりはっきりしてきてるし、それぞれの社会性も徐々に明らかになりつつある・・・ので、そのうち同じような研究が行なわれるかもしれない。

(余談)

 ところで、ウチの大学はBiology lettersを購読しているはずなので、いつもどおり普通に読めると思ったんだけど、この論文は有料となっていて17ポンドほど請求された。まあ2000円くらいしょうがないってことで払ったんだけど、なんで?他の記事はそういうことなかったのが多かったけど、一部に同じように請求が来る論文があった。雑誌の規定 を確認したほうがいいかも(※)。